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カイロに住む友達のアパートを訪ねた。入口は普通のビルだけど、中に入ると、何となく宮殿の小部屋風。天井は高く、窓はいい感じのデコラティブ。小さなテーブル、椅子は窓際に並んでいて、部屋の真ん中には中東産らしきカーペット。天井のクラシックな扇風機を見上げながら、どかどかと部屋に入ろうとすると「靴を脱いで!」と怒られた。カーペットにアグラがここの主のスタイルだった。「いい部屋じゃん」「うん。だけど一つ欠点がある…」「一つくらい我慢しろよ」「ちょと、こっち見てよ」言われるまま、窓から非常階段を見ると、荷物の山があり、荷物の隙間に人の気配があった。「何?」「住んでる…」「住んでるって、誰が?」「知らない人」。大家さんに相談しても、なかなかラチが明かないらしい。しかし、非常階段では雨に濡れるだろうと思ったけど、ここはほとんど雨は降らない。そういえば、郊外の田園地帯に行くと屋根の無い家を結構見かける。強い日差しは家より大きな樹が遮っている。非常階段の場合はビル影。鉄の階段は昼間は熱いけど、夜は冷たくなる。緊急非難住宅としては環境は悪くないようだ。「うーん、で、どうする…」「もう、諦めてる…」笑いごとではないと思うけど…。ま、エジプトだからね。
時間がたっぷりある人は、きっと、カイロからルクソールまで大河の旅を楽しむと思う。だけど、1週間ほどの旅ではちょっと難しい。だから、気分だけでもと思って、夜の観光遊覧船というものに乗ってみた。豪華ディナーにベリーダンスのセットという豪華クルーズ。…のつもりだったけど、なんだか大昔の観光旅館の夜の宴会場かと思うような賑やかさ。料理の周りはバーゲン会場。そんなところに突入する勇気はない。夜景も期待が大き過ぎて(セーヌ川のクルーズを想像してしまった)、川が広過ぎで、今ひとつ暗い。で、宴会場を抜け出して静かなバーでバーボンを頼む。なんだか、やっぱり、その場の空気にとけ込めないのは凄くつらい。つらいと思っているから、ロックを3杯飲んでも全く酔わない。さすがに4杯目を頼むとバーのお兄さんが「そろそろ、あちらでベリーダンスいかがですか?」「お腹はすいていませんか?」などと心配してくれる。その心遣いには涙が出るけど、いまさら、あの宴会場には入りづらい。というより、やっぱりボクには華やか過ぎる場所はムリなのかもしれないと思った。
エジプトに限った話じゃないけど、「旅行先で騙された!」という話は多い。一番多いのは買い物系と、乗り物だと思う。高価な買い物はボクには経験がないけど、乗り物トラブルは多い。エジプトで
頻繁にやられたのが「ガソリンが無い」というやつですね。目的地近くで急にガソリンスタンドに入る。「後で、精算するからガソリンの支払いを頼む」という手。ミエミエなので即刻下車。「ラクダ に乗って写真撮ってあげます。1000円です」という男が満面の笑顔で近づいてくる。1000円で済むはずがない。「1000円は安い!さっき5000円取られたよ」というと、すごく残念な顔。正確には、先を越されたと悔しがっている表情。だけど、面白いのは、みんな「オレはムハマドだ」と名乗るところ。 政府発行観光事業者IDカードとかいうものを見せてくれる者もいるけど、ボクにはアノ文字が読めない。でも「ムハマドはウソツキ」が刷り込まれてしまう(正直者のムハマドさんゴメン)。まあ、だけど、間違いないのは怪しいIDカードなんかをちらつかせるヤツということ。出会った人をみんな疑っていたたら旅は楽しくない。調子のいいムハマドじゃなくて、無愛想なムハマドと友達になりましょう。
「肉はエジプトが一番」と友達に言ったら「え?肉大丈夫なの?」と言われた。どーもヒンドゥーとイスラムがごっちゃになってる。真面目なヒンドゥーは菜食主義だけど、イスラムは、豚以外は何でもあり。
で、本当に何でもある。だから、何だか分からないものを随分食べた。原則として食べる前に材料を聞かない。シシカバブーとかアスフール以外はほとんど何の肉なのか分からないことが多い。で、食べたあとで恐る恐る「何?」と聞いてみる。別に、ゲテモノじゃない。脳みそだったり、睾丸だったりとちょっと普段はあまり食べないようなものが結構出てくるので、食べた後に聞くのが正解。だけど、市場で皆さんが立ち食いしていたアスフールは、つい先に聞いて失敗。「何?」「スズメ」うーむスズメか…。 だけど、どれもおいしい。はっきりいって見た目はあまり良くない。だけどおいしい。肉の市場を観てしまうと、ちょっと、なんか一瞬ひいてしまうけど、やっぱりおいしいから、その光景もすぐに忘れる。やがて、うさぎ、ひつじの味が分かるようになってくる。だけど屋台で堂々とビールが飲めないのがちょっと悲しい。
ボクは、旅行とかイベントで雨にやられたことがほとんどない。例え雨や雪になっても移動中だけ。曇天の撮影で、そこだけピンポイントで陽がさしたこともある。イベント開始1分前に豪雨が止んだこともある。おまけに「青森地吹雪ツアー」に参加した時までピーカンの晴天。なんにも自慢できるこどがないけど、天気だけは自信がある。だけど、そのおかげで旅行用の超コンパクト折り畳み傘は買つても使わないまま行方不明になる。
カイロを発つ朝、やっぱり迎えのタクシーは時間ぎりぎり。「時間ないよ」「あ、じゃ急いでチェックアウトするから」「いいよ。サービス」もちろんドライバーはホテルのオーナーじゃない。だけど結局、飲み物代とかなり使った電話代を払わずホテルを飛び出した。で、タクシーに乗ったとたん大粒の雨。「おー、砂漠の雨だ」なんだかすごく感動的な雨だった。砂漠の雨というと砂に吸い込まれていくイメージだけど、実際にはセメントに水の感じ。あっという間にフロントガラスが真っ白に固まる。「ワイパー使えよ。使い方知らないわけじゃないだろ…」「壊れてる…」「冗談だろ」「いや、雨なんかほとんど無いから」まー、確かにそうかもしれないけど、ガンガン飛ばしながら、変な姿勢で手を出して窓を拭くのはかなり恐い。…だけど砂漠の雨を見る機会なんて、そんなにあることじゃないしと諦め、空港までずっと景色に集中したのだった。
予定よりかなり遅れて、やっとカイロにもどった。やっぱり、カイロはうるさい町だけど落ち着く。丁度、夕方の買い物の時間だったのでマーケット見物へ。ボクは名所よりも土産もの屋よりも市場が好きで、訪れた町では必ずそんな場所を探して出かける。本日は、臭いから止めておけと言われた肉の市場。匂いより人がすごくて、ほとんど歩けない。でも人にもまれる市場は市場らしくて大変よろしい。雰囲気は市場というより屠殺場でしたが…。
市場から、ぽんと出ると賑やかな商店街。高級靴店があった。うーむ。隣りも靴屋、その隣りも靴屋と靴屋さんだらけ。これが、ふつうの町だったら何とも思わない。だけど歩いてる人の90%はサンダル。誰が買うんだろう。まーエジプトに限らないけど暑いところでは靴よりサンダルの方が快適というのはある。だけど、砂漠地帯は別。サンダルと足の間に熱い砂が入ると歩きづらい。それでもエジプトの人はサンダル派。と、いうわけで靴屋ではなくサンダル屋さんを探してみたけど、1軒もみつからない。ルクソールではリヤカーのサンダル売りがいたけど、カイロにはそれも見あたらない。あんまり真剣に探していて迷子になって、仕方なく市場の場所を聞いて、ようやくもどったら、もう市場は真っ暗だった。
たぶんエジプトを訪れた人は、いわゆるエジプトにエジプト人がいないことに呆然とすると思う。知識としてアラブ人支配を受けた歴史を知っていても、ひとつの地域の血がすっかり入れ替わるというのは受け止め難い。「いやいや、アラブ人とエジプト人の混血もたくさんいるよ」と言う人もいたけど「じゃ、君は?」と聞くと「オレは勇敢なアラブだ」と胸を張る。では、エジプトがアラブ人なのかというと(公式にはそういわれているみたいだけど)そうでもない。インドっぽい(ペルシャっぽい)人やアフリカンな人も結構多い。
リゾートホテルの夕食は、なんとなくアラビアンナイトなパーティー。食事は旅行中で一番豪華でおいしかった。だけど、なんだか分からないけど居心地が悪くて、早々に退散。ビーチでビールの飲み直し。星がすごい。紅海のサンセットもすごかったけど、ホテルのスタッフに「この海には、まだ機雷がいっぱいあるんだ」と聞いて、別の意味でしみじみしてしまった。だけど、星はほんとうにキレイで、それを邪魔するスタッフもいない。ただ一人アフリカンなスタッフが、すごく自然に普通な感じに「こんばんわ」と声をかけて通り過ぎていっただけだった。
ルクソールから車をチャーターして紅海海岸のリゾートへ移動。「さー、500㎞ばかり走るぜ。夕べはよく寝たかい?」「いや、蚊に襲われて…」「蚊ぁ?ふざけたホテルだ。オレがちょっと言ってきてやる」「え?いいよ。日本にも蚊はいる」「嘘だろう。清潔な日本に蚊が…」実は、夕べの蚊の襲撃は、王家の谷の呪いかと思うくらいすごかったが…。
まったく土地勘も情報もないから、車がどこを走っているのか分からない。車の運転もうまい。夕べはあまり寝ていない。で、しばらく爆睡。目覚めると岩山と砂漠の、そのまんまパリダカラリーロード。だけど、そんな所にも人が住んでいるようで、時々道路脇から手を振る人がいる。ドライバーは、そんな人の姿を発見するとアクセルを全開で踏み込む。「彼、乗せて欲しいんじゃない?」「だめだ。危険だ」うーむ。そうなのかと思うけど緊張感はない。しばらく行くと、砂漠の真ん中に2階建てのアパートの様な立派な建物が点在している。「あれは?」「政府がベドウィンを定住させようとして建てた」「ふーん」「だけど、誰も住んでいない」その言葉通り、ベドウィンのテントがアパートの近くにあった。それは不思議な風景だった。 「着いたぜ。オアシスだ」そのリゾートホテルはオアシスというより宮殿。ビーチに沿って塀がずーっと続いている。「すごいね。ところで、砂漠とビーチの境界線ってあるの?」「この道路だ」なるほど。だけど区別がつかなかった。
エジプトに限ったことじゃないけど、イスラム圏の子供たちはよく働く。ボクたち部外者は、その姿を見て「人権問題だ」とか「まるで昔の日本だ」とか「貧困が問題なのだから、まず、その貧困を…」とかいろいろ勝手な感想をいう。まったく勝手な、自国との比較でしかない感想しか言えない。
朝のルクソールの町はすごくいい感じだ。お祈りの時間が終わった頃、ボクはは散歩に出る。人も車も少ないけど馬やロバの落とし物は多い。店もほとんど開いていないけどカフェだけは開いている。「おい、オマエ、来い」テーブルを囲んだ3人のオヤジが手招きをしている。見回してもボクしかいない。「どこから来た」「日本」「日本人はよく来るけど、日本ってどこなんだ」ボクは無理矢理座らされた。「ボク知ってる」掃除をしていた少年が、床に地図を書き始めた。ちょっとあやしい地図だったが、オヤジたちは、よく勉強していると少年を誉めた。そして、しばらくアフリカ中東アジア地理談議。やがて店のオーナーが「仕事さぼってんじゃねぇ」みたいなことを少年に言いはじめたのでお終い。怒られても少年は満面の笑顔で「明日も話をしよう」と手を振った。 カフェを出ると、荷物を運ぶ少年たちがいた。建築現場で何かを拾い集めている少年たちがいた。ボクは、ちょっと変かもしれないけど彼らをかっこいいと思った。
大樹の下の簡易組み立て式軽食堂。この種の店先には必ず高さ1.2メートルほどの尖底の素焼きの壺がある。「これは何?」と聞くと「これに水を入れておくと自然に冷たくなる」と教えてくれた。すごく、飲んでみたかった。壺自体にも惹かれた。同じ形状の壺は、この辺りから日本まで広範囲に見ることができる。日本では縄文、弥生の時代に煮炊きに使われていたと習ったような気がする。インドあたりでは竈に固定してナンを焼いていた。たぶん、要するに熱効率がいいカタチなのだと思う。
で、まー、とにかく木洩れ陽カフェに座り、飲み物と軽食を注文。「あの水をくれ」と注文する機会をうかがう。だけど、なかなか「水くれ」という客はやってこない。まーゆっくり食べながら様子を…何か料理の様子がおかしい(ちなみにボクは近視)。料理の表面が動いているように見える。ぢっと目を凝らすとハエがダンスを踊っていた。急いで手で払うと、ハエたちは一斉に路上のロバの落とし物の上に緊急移動。うーむ。考え込んでいると、安全を確認したハエたちは、また大移動してくる。見事な一糸乱れぬ団体行動。そして、ボクのごはんの上でセクシーなベリーダンスを披露してくれる。 やっぱり、ここで生水を試すのはやめておこう… < 前のページ次のページ >
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